ステンレスについて デザイン

ステンレスデザイン~ステンレスの表面デザインの変遷~

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ステンレス鋼の母材(材料)の状態について

ステンレス鋼の板材は一般的に市場に流通しているものは熱間圧延材(NO.1)と冷間圧延材(NO.2B)の二種類が主流です。
鋼種はSUS304が一般的で、多くの流通問屋様で在庫を持っておられます。

写真右が熱間圧延材(NO.1)、左が冷間圧延材(NO.2B)

熱間圧延材は、板厚3.0mm以上の製品となります。 主に、構造部材やプラント機械装置、タンクなどの強度を非常に要求される部材に使用されています。

熱間圧延材(NO.1)の肌

熱間圧延材の肌は、凸凹が大きく表面にはとても厚い酸化膜があります。よって、このままの状態からいきなりバフ研磨加工等で光沢を出したりすることが困難です。
つまり、表面を一度研削して酸洗肌を落とさないと意匠表現がしづらい表面です。
全く、直接の加工が無理かという事はなく、ブラスト加工やバイブレーション処理などを行って、意匠や機能を吹かしている事例も多数あります。

つぎに、冷間圧延材(NO.2B)は熱間圧延されたステンレスコイルを冷間圧延を行い、表面を整えてきます。
冷間圧延材(NO.2B)は表面が非常に加工しやすくできており、大半の意匠表現のスタートはこの冷間圧延材となります。
板厚バリエーションは0.3mm~6.0mmであり、幅広い用途用法へ加工できる拡張性を持っております。

冷間圧延材(NO.2B)の肌

冷間圧延材(NO.2B)の表面は非常に滑らかで凹凸も少なく加工に適する表面状態となっています。 このまま直接バフ加工を行う事で汎用性の高い#400バフ研磨加工材料やスクラッチを長手に加工する事でヘアライン研磨加工板を作る事が可能となります。
また、ブラスト加工やバイブレーション加工も直接このままこの冷間圧延材(NO.2B)に施すことも可能でありますが、溶接され修正研磨加工を必要とする場合には製作方法に注意が必要となります。

ステンレス鋼の表面デザインの変遷

ヘアラインとバフ研磨

ステンレス鋼の最初のデザイン的な表現としては、ヘアライン研磨加工やバフ加工が主流でした。 この仕上げは基礎の仕上げであるので、いまでも多くのシーンでご使用されており、加工方法も多くの加工メーカーで対応できるのでかなりたくさんの用途でご使用いただいているステンレスデザインです。

昭和40年代はバフ加工というと手磨きが主流で設備による研磨加工はまだ出来ませんでした。 その後、半自動機械を経て今では大きな板材での研磨加工が可能となっています。 研磨工程も歴代の職人が改良を積み重ねて受け継いでおりますが、製造部門では常に、品質の向上や生産効率を考えて日々、工程改善を行っております。

ステンレス鏡面研磨

バブル期が到来したころには鏡面研磨が非常にはやりました。
様々な建物に鏡の様なステンレス鏡面材が用いられ、この頃にはステンレス鏡面研磨専門メーカーが多く事業展開されていました。 その後、バブル崩壊とともに鏡面研磨製品の受注は落ち込んでいき、多くの鏡面研磨加工メーカーは事業撤退を行うに至ります。

ステンレスミラー見え方の違い

ステンレスバイブレーション

ステンレス鏡面製品が減少するのと同じ時期に、ステンレスバイブレーション仕上やステンレスビーズブラスト仕上げという商品が市場へ展開し始めました。
ステンレスバイブレーションは無方向のヘアライン研磨の様なスクラッチ型の意匠デザインです。 特徴は方向性のないマットな表面であることです。
また、バイブレーションステンレス板が普及したのは修正加工が容易で幅広い加工メーカーで全国的に製作可能であることです。

現在の建築用サッシ、建具、エレベーター、壁面など汎用邸に幅広く使用されております。

ステンレスバイブレーションのメリット・デメリットとは?

ステンレスビーズブラスト

ステンレスバイブレーションと同時期にステンレスビーズブラストが登場しています。
板材での加工は容易に可能ではあるものの、加工後の修正がかなり難易度が高く、中々普及しない仕上げですが、サイン関連の金属看板や金属文字では長く使われて続けています。 表面が微小な円形の凹凸であるので光が拡散し、美しいきらめきと落ち着いた艶消しの宝飾品のような外観です。
汚れもつきにくく屋外用途での実績は非常に多い商品です。

ブラスト加工とは?特徴とよくある問題点を解説

その後のステンレスデザインの変遷

暫く、ヘアライン、バイブレーション、ブラスト、バフ、鏡面という仕上げがスタンダードで各メーカーからの商品が展開されておりました。
その中でも少し趣を変えて商品にバリエーションを持たせる工夫なども各社行ってきました。
例えば、バイブレーションの掘り込み深さを変えたり、偏芯運動を変えて柄の雰囲気を変化させたり、ビーズブラストのメディアを変える事で、見た目の意匠を変えたりとそれぞれの表現方法が始まりました。

ブラストステンレスのバリエーション

色による表現

様々な意匠表現が始まったころ、化学発色というステンレス表面を覆っている不働態被膜(酸化膜)の厚みをコントロールする事で干渉効果を発現し、光の干渉で色合いを表現する商品が登場しました。 当時は色の安定性など様々な課題はあったものの当時の各社はカラーステンレス市場を切り開いていきました。
その後、イオンプレーティングやスパッタリングによる蒸着装置が導入され、安定的なカラーステンレスが生産されるようになってきました。
さらに、近年では電解発色による表現や、進化した化学発色、さらには、精密な塗装によるカラーステンレス迄幅広く提供されるようになってきました。

3D化するステンレスデザイン

ステンレスデザインは通常平面の組み合わせや多面体をとることがあります。
また、R加工などで意匠表現が可能であり、加工による幅広いステンレスデザインが可能です。 近年、ステンレスを平面ではなく3D化した表面での意匠デザインを使用いただくケースが増加しています。 商品そのものは平成4年に完成していましたが、本格的に市場で受け入れられたのは、ここ数年くらいです。
独自の技術を用いて水面ステンレスを表現したり、鱗や水玉、幾何学的な模様迄様々な表現が可能です。 1枚からのフルオーダーでの生産も可能な3Dステンレスデザインはあらゆる研磨加工デザインとの相乗効果でさらに意匠デザインの幅を広げるお役に立てるかと思います。

ミステリアスステンレスミラーリップルス

G-Base田町 ミステリアスステンレスミラー”ripples”

日本の文化をステンレスデザインに乗せて

日本の文化をステンレスデザインに含んで日本らしい香りのするステンレスデザインを提供したいと思っています。 世界各国で独自のステンレス意匠デザインを考案され展開されています。 ヨーロッパのステンレスデザインはヨーロッパらしいメカニックな加工方法で大胆な意匠を表現されています。
日本は繊細で美しい表現が得意な文化です。 日本固有の個性を持った国産のステンレス鋼を日本の文化で育まれたデザイン技術で、金属へ日本文化を織り込んでまいります。

太宰府天満宮の飛梅をオマージュしたデザインステンレス。「梅枝」

梅枝

ホワイトステンレス 梅枝のキッチン扉:採用事例

まとめ

今回はステンレスデザインの変遷を振り返ってみました。
昭和40年代に本格的にステンレス需要が拡大をはじめ、意匠デザインも機能デザインも大きく飛躍してまいりました。
現在では、ステンレス以外でも多くの金属がデザイン表現に使用されます。
ステンレス鋼で表現できる美しいステンレスデザインをお届けできるようにこれからも技術開発を推進していきます。