金属の色合いとは?
金属は特有の色合いがあります。よく見かける金属といえば、お金(硬貨)です。
お金の材質は造幣局によると
https://www.mint.go.jp/
500円玉 : ニッケル黄銅(銅720 亜鉛200 ニッケル80)
100円玉 : 白銅(銅750 ニッケル250)
50円玉 : 拍動(銅750 ニッケル250)
10円玉 : 青銅(銅950 亜鉛40-30 すず10-20)
5円玉 : 黄銅(銅600-700 亜鉛400-300)
1円玉 : アルミニウム(純アルミニウム)
このようになっています。
この中で、純粋な素材だけで構成されているのは1円玉(アルミニウム)だけです。
後は合金により色合いが変化しています。
銅の含有量の多い10円玉は純銅板の様な色合いをしています。
500円や100円はニッケルのおかげで銀色になっています。
5円玉の色合いは、昔よく内装店舗などで見かけた、真鍮と同じようなものです。
(亜鉛の含有量が20%以上になると真鍮。 それ以下は黄銅(5円玉)
最近はキャッシュレス決済が多くなってきて、硬貨をじゃらじゃらさせることも少なくなってきました。
でも、ちょっと思い出してください。
10円玉は小銭入れの中ではくすんだ茶色。 でも本当はピカピカの銅色
5円玉もくすんだ黄色っぽい色ですが、これも本当はピカピカの黄色です。
1円玉はあまり変わりません軽くて、なんとなくコンビニの募金箱に寄付したくなる硬貨です。
色合いが変わる理由は、酸化と汚れによるものです。
では、本来の色合いの違いをステンレス鋼やチタン、アルミで見ていきましょう。
ステンレス鋼・チタン・アルミの色合い
各素材の色合いの違い
素材の段階で既に色合いが違います。この中で、鋼・合金が2種類あります。
一つは鋼 ステンレス鋼SUS304です。
SUS304という汎用ステンレス鋼は万能な金属で、加工性と耐食性を兼ね備えたとても使いやすい金属です。
SUS304は鉄に18%クロムと8%ニッケルを含みます。
表面は酸洗肌をNo.2Bといいます。(写真はNo.2B)
もうひとつは、アルミニウムA5052の合金です。
A5052は純アルミに対して耐食性を高めたのものです。アルミにマグネシウムが含有されることで性能を上げている合金です。
また、通常アルミニウムはステンレス鋼やチタンと比べ耐食性に劣ります、そのため、アルミニウムをそのまま使用するのではなくアルマイトという陽極酸化法による自己酸化膜を増加させて耐食性を高める処理をしているものをよく使用します。
アルマイト皮膜はいろいろな顔料や染料を加える事と酸化膜の厚みを変える事で鮮やかな色合いを出せるのですが、素材色ではないのでこのコラムでは割愛します。
チタンも同様に陽極酸化により色合いを変化させる事が出来ますが、同様に素材色という意味合いではないので割愛します。
→詳しくは https://www.mako-metal.com/archives/1964
ステンレスとアルミニウムの色合いの違い
ステンレス鋼は酸洗肌で白くてかてかしています。 アルミニウムはステンレスより映り込みが少なく、白灰色のような印象です。
ステンレスとチタンの色合いの違い
チタンは純粋なピュアチタンです。 表面に薄い酸化膜があり、微妙ですが茶色っぽい干渉膜がついております。 それゆえ、ステンレス鋼の鋼色と比較して茶色っぽい印象があります。
ステンレスとアルマイトアルミニウムの色合いの違い
アルマイトアルミニウムは白くマットな表面が一般的です。最近では光沢のあるアルマイト品も販売されています。 ステンレス鋼の酸洗肌とは色合いは似ていますが、表面のテカリ具合や映り込みには大きな差があります。
アルミ同士の比較 (アルマイトの有り無し)
アルマイト処理とは陽極酸化法という方法で、液中に電気を流しアルミ表面に存在している不働態膜の厚みを成長させて被膜を厚くします。 その被膜の厚みにより耐食性を向上させています。 この成長した酸化膜はポーラスな形状(小さな穴が無数に空いている)なので、この穴を埋めないといけません。 通常は蒸気などで封孔されるようですが、ここに顔料や染料などを用いて封孔すると鮮やかなカラーアルミニウムになります。
さて、このように、アルミニウムは通常アルマイトを行うと白く光沢が失われます。
しかし、最近の技術ではステンレスの鏡面加工のような状態でアルマイトをほどこす商品も販売されているようです。
チタンとアルミニウムの比較
チタンは一般的に市場に出ているものは酸洗肌の物です。(写真)
建材用のチタンは表面が凸凹したダル仕上というものが良く使われています。
ステンレスでも、チタンでも同様ですがダル仕上というのは凸凹の模様のついたローラーで材料に凸凹をつけるものです。 ロールダルとも言います。
その原材料はこの様な酸洗肌の材料となります。
アルミニウムと比べて見てお分かりの通り、表面のつるつるとした印象はステンレスほどではないにしろあります。 アルミニウムは少し、筋の様な模様があります。
色合い的にもアルミは白い白銀に近く、チタンは酸化膜の具合で微妙に茶色の風合いとなります。
ステンレス鋼の鋼種による色合いの違い
~ 汎用ステンレスとホワイトステンレス ~
ステンレス鋼は、前述の通り鉄にいろいろな金属が混ざり特性を上げています。
耐熱性や耐食性を上げるためにモリブデンを含有したり、クロムの含有率を高めたりと様々に調合して、いろいろな鋼種に分かれます。
さて、これまで紹介してきたステンレス鋼はSUS304という汎用ステンレス鋼です。
では、内装用に映えるホワイトステンレスとの素材の段階での色合いを見てみます。
同じステンレス鋼といってもこれほどまでに色合いや見た目が変わります。
中に含まれる成分というだけでなく、鋼の構造も違います。
汎用ステンレス鋼SUS304はオーステナイト系ステンレスで磁石が付きません。
ホワイトステンレスはフェライト系ステンレスで磁石が付きます。
構造も違うんです。
ところで、磁石がつくステンレスはすぐ錆びるという都市伝説的な話がありますが、あれは、フェライト系ステンレスSUS430を屋外に使用した場合に錆びやすいというだけで、磁石がつくものはすべて錆びやすいなんて言うのは都市伝説です。
実際にはフェライト系高耐食ステンレス鋼種の方が海際などで採用されることは非常に多いです。
磁石がつく事は機能的にメリット(キッチン等)もあり、皆様の正しいご理解をお願いします。
ホワイトステンレス鋼について、詳しくは
ホワイトステンレスはデザイニング研磨する事で色合いを変える。
ホワイトステンレス鋼は原板のままではちょっと光沢のあるボヤっと白い表面です。その原板をデザイニング研磨加工を行い商品に仕上げる事で、美しい白銀の仕上げとなります。
原板の色合いだけでなく、その原板の色合いを如何に際立たせるかというのも色合いやコントラストの調整には重要です。
ホワイトステンレスとチタンとアルミ
ホワイトステンレス鋼をチタンとアルミニウムと比較してみました。
こうやって比較するとホワイトステンレスの原板の状態では鋼の色合いが他の非鉄に比べ際立っています。
非鉄であるチタンやアルミニウムは鉄ではないので柔らかい印象の色合いです。
対して、鋼であるホワイトステンレスは鉄の重厚感が出ています。
しかし、ホワイトステンレスは前項で見ていただいたように、デザイニング研磨をほどこした調品となる事で、鉄の重厚感の色合いから、エレガントは白銀の鋼の色合いへと変化していきます。
まとめ
金属の素材の持つ色合いについてご紹介してまいりましたがいかがだったでしょうか?
鉄系の鋼と非鉄系の金属では見た目も大きく変わります。
それ以上に研磨加工、陽極酸化加工等での色合いの変化はさらにバリエーションが増えてまいります。
金属素材の色合いの差でコントラストを表現する事も可能です。
金属素材はまだまだ、新しいデザイン表現が出来るポテンシャルを秘めています。
どうぞこれからも金属素材の意匠についてご期待頂ければ幸いに存じます。
宜しくお願い致します。