ステンレスミラーの種類
ステンレス鋼を様々な方法で研磨加工を行うと鏡のように成ります。金属を磨いて鏡のように仕上げる事から鏡面研磨やミラーポリッシュなどと呼ばれます。ステンレス鋼が鏡のように成る事からそれを鏡のように使用する用途をステンレスミラーと呼ばれています。
ステンレスミラーのメリットはガラスの鏡に比べて、
①軽い ②割れない ③大型化が可能 ④コンパクトに出来、手鏡など自由度が高い ⑤自由自在な形状に加工する事が出来る 等です。
では、ステンレスミラーは1種類なのかという疑問が湧きますよね。磨き方もたくさんある分、ステンレスミラーのグレートや種類があります。よく間違えられるステンレスミラーの種類についてご説明します。
ずらっと並んだ代表的な鏡面研磨されたステンレスミラー
グレードは左に行くにつれてハイグレードになります。用途的には建材用ミラーは複合バフミラー#700SK以上(左)が一般的です。
産業用機器やダクト類、ケーシングや構造体の鏡面仕上げはほぼバフ研磨#400です。ステンレスミラーとして使う場合には艶出し研磨NO.8以上(左)が必要です。
ステンレスミラーそれぞれの特徴
ステンレス鏡面研磨方法による特徴
では、それぞれのステンレス鏡面加工方法による違いと特徴をご説明します。
①#800本鏡面研磨
なぜ、#800と書いてあるかというと初期の研磨方法の中で研削砥石のグレードが#800であったことに由来するようです。 実際には#800以上の研削砥石で仕上げていますので総称的な意味合いと思って頂ければと思います。
この商品の特徴はステンレス鋼表面を研削砥石で削り平面を出して鏡面化するのでとても美しい鏡面となります。 ハイグレードなサインや建材、什器に用いられます。難点は大変工数がかかるので価格が高くなる事、納期がかかってしまう事です。
鏡として使用するには最高級のグレードとなります。
②艶出し研磨No.8(BA)
一般的なステンレスミラーに用いられる商品です。 建材用から手鏡、プロダクト等幅広く、意匠的に鏡面を必要とする用途に数多く用いられます。市場からの入手性も高いので価格も相応です。
デメリットとしては、ステンレス母材がBAからしか作れないことです。従って、板厚は0.3mm~2.0mmまでの限定的な商品となります。
また、この研磨手法はステンレス鋼BA仕上げの表面を研磨して艶を出す仕上げです。よって、加工した商品にさらにバフで仕上げると光沢が変わるという難点があります。溶接などしない商品には適していますが、溶接構造体の場合は注意が必要です。
③バフミラー#700K(BA)
この商品は建材や加工の多い用途に用いられるステンレスミラーです。柱巻きやサッシ等で長手に向かつて仕上げが入る商品に向いています。 この研磨手法はステレス鋼BA仕上げの材料に非常に柔らかいバフで長手方向に研磨します。 外観は長手に薄い筋が入ったようなステンレスミラーとなります。
鏡として用いるには少し物足りません。 大きな面積で円形加工や複雑曲げ加工等の長尺品などに向いています。 価格は①②に比べ下がります。納期的にも早い仕上げです。 デメリットは内装やラグジュアリー用途に鏡としてのデザインでは使用しにくいところです。(デザイン的に複合化さたものは良く使われるのでご注意)
また、板厚制限は②のNo,8同様 0.3mm~2.0mm限定となります。
④複合バフミラー#700SK
この商品はバフミラー#700K(BA)で対応できない板厚や板幅、鋼種に対してバフミラー#700K(BA)と同等のグレードになる商品です。
複合の意味合いは一度表面を研削砥石で削り、その表面をバフミラーに仕上げる手法です。 従いまして、板厚は冷間圧延材だけでなく熱感圧延材にまで適用できます。つまり、10mmでも20mmの板厚でも可能となります。
見え方はほぼ#700K(BA)と同じですが、研削砥石のラインが残る事もあります。
建材用や機能部品、反射部品などには適していますが、手鏡や鏡としてのラグジュアリー用途には向きません。 細かいサイン部品などには最適です。
また、研削砥石で表面を整えるというのは①の本鏡面研磨同様です。従いまして、価格的には高額となる事と納期がかかるというデメリットがあります。構造体に使用した場合の溶接修正などは母材であるステンレス鋼表面を研削砥石で整えているので作業しやすくなっています。
⑤光沢研磨#700K
通称光沢研磨。 呼び方は#600や#700等と呼ばれますが、基本的にスタンダードな素地である#400バフ研磨の光沢を上昇させたものです。
この用途は型鋼(角パイプや丸パイプ、アングル、チャンネル等)の形状物を什器用途などに用いる場合に使用します。 板形状の商品でご使用いただく場合は面積が小さかったり、意匠的に多くを追求していない場合に用いられます。 また、構造物の部品上の切り板や加工物にも多く使用される仕上げです。
この商品はバフの光沢を上昇させてものであるので、ステンレスミラーとして手鏡や鏡には全く適していません。 ステンレス鏡面タンクローリーや鏡面のタンクなどのどちらか言うと衛生面を重視する場合に用いられる仕上げとなります。
⑥バフ研磨#400
最も汎用的でスタンダードなステンレスミラー。 産業機器から医療機器、食品機器、ダクト、厨房、半導体製造装置、搬送機器等ステンレスミラーが機能的に衛生的に、メンテナンス的に意匠的に必要な幅広いプロダクトに適用されます。
板厚や板幅、形状、冷間圧延材、熱間圧延材問わず適用できる商品です。 全国的にも汎用ステンレスとして幅広く流通しておりますので価格も納期もほぼ全国的に同水準となっているもっとも使いやすいステンレスミラーです。
溶接修正も容易であり、形状物の傷補正も容易です。 現場での保守やメンテも簡便であり非常に重宝されています。
デメリットはバフで磨いているために太陽光や屋内光の光線具合でバフ目に乱反射して白く見えてしまいます。 従ってステンレスミラーの手鏡や鏡、アート作品等の鏡を基調とした意匠には全く向きません。 あくまでも産業用途です。
しかし、最近 これまでこのバフ研磨が意匠的にはグレードが低く見られる傾向にありましたが、このバフ研磨を他の意匠研磨加工と複合化させることで著名建築の外装にも使用できる事例が発生しています。 従来の常識を覆す使用用ともこれから期待できるところです。
→ バフ研磨を著名建築デザイン意匠として使用した例
福岡県弁護士会館 内外壁面及び天井材
ステンレスミラー選択できるステンレス鋼の材質
それではステンレスミラーに選択できるステンレス材質についてご説明します。
下図のようになりますので、ご使用の用途と機械的強度などを勘案して選択する必要があります。
ステンレスミラー見え方の違い
それでは、各代表的なステンレスミラーを比較して見え方の違いを説明します。
本鏡面とバフ研磨によるステンレスミラー見え方の違い
左が#400バフ研磨で右が本鏡面#800です。 上部はなんとなく同じ状に思われるでしょうが、下部を見て頂くと白さが違います。
これはバフ筋が光の乱反射をとらえ白く見えてしまう事で発生します。 角度によってこのように白く見えてしまうのがバフ研磨#400の特徴です。
角度を変えて見てみます。 バフ筋の乱反射の動きが見えるかと思います。
乱反射しているところにフォーカスして本鏡面と並べて撮影します。
この白っぽい筋(左側)がバフラインです。反射公害などを気にする場合にはあえてこのバフ研磨をベースに意匠製作するという手も最近はよく使われる手法です。
本鏡面とバフミラーによるステンレスミラー見え方の違い
左が#700バフミラー研磨で右が本鏡面#800です。
若干左側の#700バフミラーが白っぽく見えるかと思います。
乱反射しているところにフォーカスして本鏡面と並べて撮影します。
#400バフ研磨程のバフ筋は無いですが、薄いバフラインが見えます。
これが乱反射して、上写真の様な若干の白さが発現します。
バフミラーと#400バフ研磨によるステンレスミラー見え方の違い
バフ筋の具合を拡大してみます。
このバフ筋濃さや太さの違いが光の乱反射具合を変えるので、見え方が変わります。
少し角度をつけて全体を見てみます。 屋内では白いバフ筋が色合いに影響を出しています。
ステンレスミラー映り込みの違い
実際に使用される環境を想定して屋外でのステンレスミラーの見え方や周囲の環境の映り込みについてみてます。
屋外では特に光の乱反射が激しくなります、その光の乱反射とステンレス鋼表面の粗さの状態でこのように映り込みも変わります。
見る角度によってこのように映り込みの状態は変化します。
ステンレスミラー光沢の違い
これまで、外観的な見え方をご説明してきましたが、では実際定量的にどのくらいの光沢であるかを数値で計測してみます。
数値的にも、バフラインがあると光沢値は低下します。
(※実測値であり保証値ではありません)
まとめ
一般的にステンレスミラーといえば一色単になっています。
手鏡やカード型ミラーなどの場合は既製品で購入されることがほとんどだと思いますので、あまり間違いは無いように思いますが、建築の内外装、機器類、什器、アートワーク、作品などでは良く問題を耳にします。
実際に、鏡面グレードでお悩みになった方々からのご相談は年間通して結構ございます。今回、基本的なグレード面や品質面、見え方をご紹介いたしました。
ここに記載の商品は弊社内で生産品目ですので、お気軽にお問い合わせください。