研磨加工の一つに「鏡面仕上げ」と言われるものがあり、文字の通り、金属の表面を鏡のように仕上げる加工方法を言います。しかし、一般的に認識されている範囲と金属加工業界が認識している範囲に違いがあるなど、実はまだまだ知られていないことが多くあります。
そこで今回は、
「鏡面仕上げとは?」
「どんな特徴があるの?」
「どんなバリエーションがあるの?」
などの鏡面仕上げについて、解説していきます。
鏡面仕上げとは
鏡面仕上げとは、金属の表面を鏡の様な映り込みに仕上げる意匠研磨仕上げです。すこし、ここで【表現のご注意】があるのですが、私たちの業界と、一般に認識されている範囲が少し違う事を説明します。
一般的に製造されているステンレス鏡面板材でご説明します。
顔がきれいに映る仕上げとして、鏡面仕上げと一般認識されている商品は、
1、バフ仕上げ#400
2、光沢バフ仕上げ#600
3、バフミラー仕上げ#700
4、艶出し鏡面 NO.8
5、鏡面加工 #800
このような商品群があります。
私たちの業界では
鏡面とは 3,4,5を意味します。
しかし、一般的には
1~5は鏡面と認識されます。特に、1の#400鏡面研磨品は“磨き”と言われることが多いです。ですから、購入されるときは用途をお話しされたほうが良いです。
ステンレスの研磨に関する詳細な内容は下記をご覧ください。
鏡面仕上げとは表面が鏡のように映りこむものでありますが、そのグレードや意匠表現の違いで使用用途が多岐にわたります。 傷の補修は鏡面加工のグレードが上がるほど、難しくなります。
ステンレス鏡面板の中で最も多く使用され、様々な用途へ広く使用されているのがステンレス#400バフ研磨板材です。 この商品は半世紀以上愛されているステンレスの表面仕上げ代表格です。 用途も医療機器用から食品機器用、車両用、さらには半導体製造装置や表示デバイス製造装置に至るまで様々な用途へ展開しています。 一方、ステンレス#600以上の鏡面板は建築内外装用や機器類に多く使用されています。 もちろんグレードが上がるにつれて価格も上がります。なので、最上級仕様ばかり使用するわけにはいかないので、用途用法に合わせて選択いただいております。 ステンレス製の溶接化加工を伴うデザイン性の高い建築加工品では、手直しが効くのは#700となります。 テクニックで欠陥部位を見せない作り方が出来る場合にはNo.8がお勧めです。 ただし、鏡としてご利用する場合には板厚を2.0mm以上で且つフラットなステンレス板からの#800以上が好ましくなります。
一般的にはステンレスSUS304鏡面板が主流ですが、耐食性の高いSUS316やクロム系のSUS430等、用途に応じたステンレス鋼種にも鏡面加工は可能です。 是非、デザイン的な面や機能的な面からご相談いただけると最適な商品をご提供できます。
溶接部位の仕上げ方法と仕上がりですが、ステンレス#400バフ研磨板材は、サイザルバフで仕上げます。 溶接部位をサンダーなどで仕上げた後、ペーパーでおおよそ#600程度まで上げ、サイザルバフで仕上げると#400になります。 ここで注意点はバフ目を合わせることです。 バフ目がずれたり直行したり、斜め向いたりすると途端に意匠性が損なわれてしまいます。 ご注意ください。
ステンレス#600や#700のバフミラー仕上げ方法については、#400に仕上げた後面バフなどを持ちいてバフ目を消し光沢を上昇させます。 #4000バフ研磨程バフ目に合わせるまではないですが、それでもバフ目方向は同じにしないと反射加減で交差して見え斑な仕上げになりますのでご注意ください。
ステンレスNO.8や#800の修正方法ですが、これはかなりテクニックがいります。こればこれまでの修正で使用したグラインダーというわけにはいかず、円周上に回転するポリシャーを使用します。 #700くらいまでグラインダーで研磨加工後、最終ポリッシャーで仕上げますが、液体などかなり特殊なので、ノウハウと技術が必要です。
特徴
鏡面研磨仕上げは、グレードにより難易度が変わります。生産方式も設備も特別なものが必要になります。
小さなもので、#400程度であれば比較的技術を習得すれば仕上げることが出来ます。適応素材はステンレス鋼、チタン、アルミ、銅、真鍮に仕上げる事が可能です。
しかし、グレードによっては適用できない仕上げもあるので都度問い合わせいただいています。また、設備は各々異なりますが、板形状、角パイプ、丸パイプ、チャンネル、アングル等の型鋼、また、加工品形状まで幅広く仕上げる事が出来るのも大きな特徴です。
美しい鏡の様な鏡面仕上げはあらゆるデザインパターンを作るもののベースとなります。 ステンレス鏡面板の種類は豊富ですので、屋外で反射公害を抑えたい場合には反射率の少ないステンレス鏡面板をベースとしてテクスチャー形成すると良いです。 また、内装などで表現したい場合はステンレス鏡面板の反射率は上げた方が良いですし、さらに、映り込み要素を付加していきたい場合は解像度の高いステンレス鏡面板を選択すると良いです。
【活用事例はこちら】
その他、ステンレス鏡面仕上げに関する詳細な記事は下記をご覧ください。
バリエーション
ステンレス鏡面仕上げは様々なグレードで表現されますが、意匠表現としては、鏡面仕上げの上にテクスチャーを形成したり、部分意匠加工を行ったり、部分塗装や蒸着加工など、意匠表現のバリーションは豊富です。 金属加工において発生するバリ取りという作業時に鏡面部に食い込んでしまうと白くぼやけるため、買おう形状によっては後加工修正が可能な商品を選択するか、加工手順を変えるコトが必要となります。
あくまで、ステンレス鏡面板材は材料ですので、皆様がお作りになられる商品を軸に、スターとするステンレス鏡面板材のグレードを決めて仕上がりを意識しながら加工方法を選定していくことで結果的に早く効率の良い生産が可能となります。
実際の活用事例についてはこちらをご覧ください。
ゴールデンウォータードロップ
黄金色のステンレス
ミステリアスステンレスミラーリップルス
JEUX D’EAU(ジュ・ドー)
水明(SUIMEI)
注意点
ステンレス鏡面仕上げはとても表面が滑らかです。 それ故にとてもデリケートな表面仕上げです。
耐食性はその滑らかな表面粗さのおかげで初錆は少ないですが、お掃除は気を使います。ちょっとでもごみを含んだスポンジや雑巾で掃除をすると傷が入ります。さらに、きれいな水を使っても、水痕、水シミ、拭きムラが出ます。
最初はきれいな鏡面仕上げですが、用途的には+αの要素を入れたほうが良い場合があります。
ちなみに、鏡面仕上げはなめらかであるがゆえに、弊社(子会社)が扱う、耐指紋コーティング材MaCoat GCなどは極めて塗りにくいので汚れ対策はお手入れが基本となります。
表面に凸凹のテクスチャーがあると比較的汚れや指紋などが目立ちにくくなります。
【美しいデザインをいつまでも】
誰でも手軽に簡単に指紋対策が出来るコーティング液を販売しています。 耐指紋コーティング液「MaCoatGC」は金属に液体を塗るだけで、指紋対策ができます。コーティングされた金属は見た目にはほぼわかりません。 液体コーティングは金属の場所、形を選ばず手軽に施工できるため、エレベーターの三方枠や内装パーテーション、アートワーク等、様々なところに採用が進んでいます。 ご購入に関しては当社へ直接お問い合わせください。