ステンレス鋼は屋内、屋外でも腐食に強く表面が劣化しにくい機能を持っていることから建物の外壁や内装材など幅広く用いられています。
外壁や内装材として、金属の意匠表現は様々な形態で表すことが可能ですが、その中でもステンレス鋼は磨いたままの素地で表現できる数少ない金属種です。
単一のデザイン研磨による金属らしい雰囲気の演出ももちろんのこと、研磨加工を組み合わせることで、これまでにない空間の表現を実現することができます。
そこで、今回は東洋ステンレス研磨工業がこれまでに行った2Dステンレスのデザイン研磨加工による事例をご紹介します。
2D意匠のデザインコンビネーションがわかる記事となっておりますので、ぜひご覧ください。
ステンレス研磨の標準的なデザイン表現
ステンレス鋼は屋内、屋外でも腐食に強く表面が劣化しにくい機能を持っています。
それゆえに、建物の外壁や内装材、キッチンや厨房、水洗金具などの水回りに多く使用されています。
基本的には同じデザインの研磨加工を施すことでその外観を作ることが一般的に行われています。 ヘアライン加工や#400(バフ研磨)加工というのが最も一般的な仕上げとなります。
デザインを組み合わせることで実現する表現
単一のデザイン研磨加工で表現するとまとまりのある金属らしい雰囲気を全体的に醸し出すことが可能でありますが、何かの意図やコンセプト表現にはおとなしい印象となります。
そこで、研磨加工をデザイン的に組み合わせることで、意図やコンセプトを表すことが可能となります。
<事例1 ファサードデザインコンセプト>
ディズニーコンサートホール(USA)
アメリカの巨匠 フランク・ゲーリー様の作品です。
この壁面を覆うステンレス鋼のコンセプトは“帆船の帆が波間に煌めき、朝陽と夕陽で表情を変える”ファサードです。
機能的には光を乱反射・拡散が必要な仕上げとなります。
【光を捉え拡散する。】
全て6層以上の様々なデザインの研磨加工を複合化して機能的に満足させ、且つ課題であるコンセプトを満たす仕上げとして採用いただいた事例です。
遠目には見えない不思議な煌めきの走るデザイン研磨加工を施しています。
<事例2 職人技と機械オペレーションの複合化>
アートグラインディング ”焔”
ジーク株式会社様の作品
1990年代に多くみられたアートグラインディング手法を現代の機械オペレーション技術と複合化して表現した事例です。
通常、グラインダーを用いた研磨加工では単一の描画となりやすく、見た目によっては、あまり美しくない表情となることもあります。
この建物の内壁(内側から外へ見せる壁面)はライトアップと炎の煌めき表現が重要なコンセプトとなります。
そこで、従来のアートグラインディング手法ではなく、3層にもなる背面の意匠的な素地を機械オペレーションにより作製し手作業では表現できない規則的な意匠を形成しています。 その素地を活かして、職人技であるアートグラインディング手法で炎を描いています。
そうすることで、ゆらゆらと蠢く炎の乱舞を躍動的に表現することが可能となります。
このように、機械を用いた仕上げと職人技との複合デザイン研磨により美しく妖艶な炎の壁面が誕生しました。
<事例3 壁面全体で福岡の伝統を表現>
福岡県弁護士会館 ”博多献上柄のオマージュ“
建築家 古森弘一様の作品
様々なチャレンジをおこなった事例です。
まず、壁面全体でのテクスチャーデザインという大枠であり、1枚のパネルに3種のデザイン研磨加工が施されたパネルをデザイン配置していく壁面です。
3種のデザイン研磨加工はそれぞれのパネルで異なっており、全部で10種類のパネルデザインを壁面全体のデザインに合わせ配置した意匠となります。
特に、この意匠表現は遠くから見た意匠だけでなく、近づくことで博多献上柄の独特の紋様をオマージュしたデザインが現れるようになっています。
さらに、屋外と屋内のステンレス鋼種を変えることで素材色を変え、外壁は力強く、内壁は優しくエレガントな印象を醸し出すデザインとなっています。
そして、全てが不均質仕上げであり、規則性のない自然なゆらめきが幻想的であり力強い弁護士会館を飾る意匠となっています。
<事例4 和風内装とステンレスカウンター>
高級天冨良 天寿様カウンター
株式会社ズーム様の作品
高級天ぷら店の内装を手掛けられており、元々全て朱色のカウンターであったところにステンレスを採用いただきました。
商品化したての“デザイニングステンレス梅枝”を選んでいただきました。
背面の美しい和風の内装とマッチングした、とても素敵なカウンターとなりました。
和風内装とステンレス鋼をコンビネーションさせる意匠は見事です。
また、商品化したてのデザイニングステンレス梅枝をご指定いただいた、店主(オーナー様)の感性は素晴らしいです。
この採用事例があってから、日本国内へデザイニングステンレス梅枝は普及展開が始まりました。
まとめ
金属の意匠表現は様々な形態で表すことが可能です。
その中でも、ステンレス鋼は磨いたままの素地で表現できる数少ない金属種です。
塗装やメッキや印刷のように金属を覆うのではなく、削られた金属肌を活かして、素材の自然な輝きや質感を感じることができます。
単一にあるものを使用するだけでなく、少し組み合わせの工夫やデザイン研磨加工などを含めて表現すると、これまでにない空間が出来上がるかと思います。
試作などお気軽にお問い合わせください。